春が来た

デンマークもようやく春らしくなってきました。水仙とチューリップ、レンギョウ、木蓮が一度に咲いています。デンマークでは、庭や玄関先にデーンと木蓮の大木を植えているおうちが多く、圧巻です。冬が暗くて長いので、待ちに待った春、という感じです。

「古代においては、花にはその花の霊力が宿り、その霊力を生成するのは、神のなせるわざである。(…)花だけではない。人間を含む動物、さらには鉱物にも霊力があり、それが万物生成の霊力と解釈される『ムスヒ』の神によって与えられる」と考えられていました(千田稔・古事記の宇宙ー神と自然、より)。古代の人々にとって、冬に枯れた植物が春になって芽を吹き、そして美しい花を咲かせることは、神によって担われる神々しい現象だったのですね。

現代を生きる私たちは、古代の人ほど、花が咲く現象に神秘性を感じることはありませんが、それでもやはり、毎年花が咲くことについて、ありがとうとでも言いたいような気持ち、は持ち合わせていると思います。そして毎年のことながら、花の美しさに感動します。それは、私がもう若くないからかもしれませんが…。

親から子へ受け継がれていくもの、についても、昔はムスヒの神が担っていたのでしょうか。三好達治の涙」という詩が思い出されます。

とある朝 一つの花の花心から 昨夜の雨がこぼれるほど

小さきもの 小さきものよ

お前の眼から お前の睫毛の間から この朝 お前の小さな悲しみから

父の手に こぼれて落ちる

今この父の手の上に しばしの間 温かい ああこれは これは何か

それは父の手を濡らし それは父の心を濡らす

それは遠い国からの それは遠い海からの

それは このあはれな父の その父の そのまた父の まぼろしの故郷からの

鳥と歌と花の匂いと 青空と はるかに続いた山川との

風のたより なつかしい季節のたより

この朝 この父の手に 新しくとどいた消息

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